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【資料】環境ホルモン問題とビスフェノールA

2005年7月1日
ビスフェノールA安全性研究会


1997年、”奪われし未来”(邦訳版)の出版と、翌98年、環境庁(当時)の”内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質”リストを含むSPEED98の公表を受けて、マスメデイアの報道を契機に社会の人々にビスフェノールAを原料とする哺乳ビン、給食器及びコーテイングされた缶を容器とする清涼飲料などへの不安が広まった。
環境省は、’00年のSPEED98改定の際、”これらの化学物質は、内分泌かく乱作用の有無、強弱、メカニズム等が必ずしも明らかになっておらず、あくまでも優先して調査研究を進めていく必要性の高い物質群”との注釈を付けたが、一端燃え上がった不安の火を沈静化させることは出来なかった。

国内外のビスフェノールAの製造事業者は、お客様に安心して製品を使っていただくために、’97年から内分泌かく乱化学物質問題の調査と研究に共同で取り組んできた。
vom Saal教授が発表したビスフェノールAの低用量作用に関して、マウスを使ったより大規模な1世代試験を実施したが、低用量作用は再現されなかったとの研究成果を環境省主催の第1回国際シンポジウム(京都)で発表した。
さらに長期間にわたる影響の有無を評価するため、ラットを用いた3世代にわたる大規模な試験を実施し、低用量作用は認められなかったとの研究成果を第3回国際シンポジウム(横浜)で発表した。
この他、水生生物を使った試験や人の安全に関する各種研究を実施し、その結果を公表してきた。

行政当局も国民の安全を守るため、’98年以来、多大な国家予算をこの問題の調査研究に充ててきた。それらの一例として、厚生労働省や環境省もラットを用いた大規模な試験を独自に実施し、ビスフェノールAについて低用量作用は認められなかったことを公表している。
こうした一連の取組みの結果として、例えば厚生労働省は「ヒトに対して内分泌かく乱作用が確認された事例はない」(’98,’01,’05年中間報告)、環境省は「現時点で、内分泌かく乱作用の観点から規制的にリスク管理を行うことが必要な化学物質はない」(’05年ExTEND2005)とそれぞれ発表した。

一方で、ビスフェノールAについては人が摂取している”低用量”で内分泌かく乱作用が認められたとする研究報告も多数ある。研究結果により作用があったとする報告と認められなかったとする報告があり、社会の人々の混乱の原因ともなった。
リスク評価の分野で権威あるアメリカのハーバードリスク分析センターの専門家パネルは、ビスフェノールAの低用量作用に関する文献(’02年までに学会誌掲載分)を対象に、”証拠の重み付け(weight of evidence)”によって内容の評価を行った。”証拠の重み付け”とは、複数の研究で再現される”確証”、試験方法の”厳密性”、”統計学的検出能力”など7項目の評価基準に照らして研究報告を評価する手法である。
その結果専門家パネルは、「ビスフェノールAの低用量作用についての一貫した肯定的証拠はないと判断した。」と結論した。
さらに、このような試験結果のバラツキの要因は、測定方法の相違、試験の検出能力、動物の種差や食餌の影響などが考えられるとしている。

以上のように、我々が実施した研究成果と行政のそれらの結果、及び信頼すべき学会の専門家の評価結果から、ビスフェノールA安全性研究会は「ビスフェノールAは、ヒトが曝露されるような低用量での”環境ホルモン作用”はない」と明言することができる。

*正しくは”内分泌かく乱物質問題”であるが、通称の”環境ホルモン”で説明した。

参考資料
  1. 低用量における Dr.vom Saal らの試験とその再現試験
  2. 3世代生殖毒性試験結果
  3. ハーバード大学リスク分析センターの専門家パネル「ビスフェノールAの低用量作用はなかった」
  4. 環境省 「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について -ExTEND 2005-」

Copyright The BPA Safety Committee of Japanese Manufacturers (BSCJM)