EFSA(欧州食品安全機関)によるBPAのTDI改訂について
EFSA(European Food Safety Authority:欧州食品安全機関)がBPAのTDI(耐容一日摂取量)を従来の4μg/kg/日から0.00004 μg/kg/日(0.04 ng/kg/日)へと大幅に下げる意見書案を2021年12月に公表しました。その後、EFSAは関係者からの意見を求めさらに検討を行ってきました。その結果、TDIを0.2 ng/kg/日とする最終結論が2023年4月19日付けにて公表されました。
BPAの毒性問題については、非常に低い用量でも影響がある(「低用量影響」という)、あるいは、高用量で影響がなくとも低用量で影響がある(「非単調用量反応」という)という試験結果が報告されており、それは事実かという論争が長く続いてきました。
この問題に決着をつけるべく、米国ではFDA(食品医薬品局)が中心となり、CLARITY-BPAという大規模な試験を行いました。その結果、低用量影響、非単調用量反応は認められないとFDAは結論しています。
当初2021年12月に公表されたEFSAの意見書案のTDIは、非常に低い用量でも影響があるという試験結果に基づいて設定されています。
関係者からの意見の提出要請に応じて、我々も所属するBPA及びポリカーボネート樹脂の世界の主なメーカーで構成するPC/BPA Global Groupは、「GLPに基づいて実施したより信頼度の高い試験結果では、低用量での影響は認められず、その結果を重視すべき」との意見書を提出しました。
また、CLARITY-BPAの試験を行った米国FDA及びドイツで食品安全のリスク評価を担当するBfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)などからもTDI改訂案に反対する意見書の提出がありました。
我々やFDA、及びBfRの意見が考慮されず、EFSAによる今回の最終決定については、我々としては納得が行きませんし、非常に残念に思っています。
現在でも、FDAは「低用量影響、非単調用量反応は認められない、BPAは安全である」という見解を変えていませんし、日本の厚生労働省はTDIを0.05 mg/kg/日(50,000 ng/kg/日)としています。また、(EUを除く)その他の国の政府の食品安全担当局はFDAの見解と同様で、従来の立場は変わらないように思われます。
我々も、FDAや日本の厚生労働省、食品安全委員会と同様に、現状の使用条件ではBPAの使用による安全性には問題ないと考えています。
詳しくは以下の資料を参照してください。
EFSA意見書案
Public Consultation: (europa.eu)
EFSA最終意見書
Bisphenol A in food is a health risk | EFSA (europa.eu)
FDA:CLARITY-BPAの試験結果
CLARITY-BPA Program (nih.gov)
FDAのBPAの安全性に関するQ&A
Questions & Answers on Bisphenol A (BPA) Use in Food Contact Applications | FDA
BfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)の意見
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05740350314
日本の厚生労働省のビスフェノールAについてのQ&A
ビスフェノールAについてのQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)