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FDAによるビスフェノールAの安全性試験

FDAによるビスフェノールAの安全性試験

経緯

ビスフェノールA (BPA)は、食品接触材料に使用して差し支えない物質として、1960年代にFDAに承認され、使用されてきました。その後、BPAの安全性に対する懸念が社会的にとりあげられるようになりました。そのため、FDAとしてもBPAの安全性につき再検討を行い、2008年8月に、BPAを食品接触材料として使用しても安全であるとする報告書草案を発表しました。ところが、その草案を審議したFDA科学小委員会は、草案は最新の科学的情報を十分に考慮していたかどうか疑問である旨の答申を行いました。

そのため、FDAの専門家は、300件以上の科学的研究報告の検討を行い、2014年秋に、食品包装におけるBPAの安全性評価の改訂が必要となるような情報は得られなかったと結論しました。

https://www.fda.gov/food/food-additives-petitions/bisphenol-bpa

 

そして、BPAを食品接触用途に使用することに対するQ&Aで、「BPAは安全ですか」「はい」と、BPAを使用して差し支えないことの再確認をしました。

https://www.fda.gov/food/food-additives-petitions/questions-answers-bisphenol-bpa-use-food-contact-applications

 

一方では、さらにBPAの安全性を確認するために、FDA自身でBPAの安全性試験を実施することとしました。その一連の試験の総仕上げとも言うべきラットを用いた2年間の慢性毒性試験兼発生毒性試験の結果が公表されました。

https://ntp.niehs.nih.gov/results/pubs/rr/reports/abstracts/rr09/index.html

この試験は、通常の2年間の慢性毒性試験に加えて、胎児期の暴露の影響を調べるための発生毒性試験も合わせ行っている特徴があります。また、低用量での影響を観察するために5用量を用いて幅広い用量(陰性対照群と2用量の陽性対照群を含めると8群)を用いている、新生児期での暴露によるBPAへの影響を評価するために、乳児期のみ投与群も設けるという非常に大規模な試験でもあります。

この試験の結果は、以下の通りで、BPAを食品接触用途に使用して差し支えないというFDAの従来からの見解をあらためて確認したものとなりました。

 

 

試験結果の要旨

NTP Research Report on the CLARITY-BPA Core Study: A Perinatal and Chronic Extended-Dose-Range Study of Bisphenol A in Rats

CLARITY-BPA Core StudyについてのNTP研究報告書:

ラットを用いたビスフェノールAの広範囲用量の周産期及び慢性の研究

NTP Research Report 9  2018年9月

 

<試験方法>

動物種:NTCR CDラット(SDラットの一種)

1群当たりの動物数:2年間飼育群は動物50匹/群、1年間飼育群は26匹/群

投与経路:強制経口投与

投与量:BPA 0, 2,5, 25, 250, 2,500, 25,000μg/kg/日

(陽性対照としてEE 2群 0.05, 0.5μg/kg/日)

投与時期:母親は妊娠6日から、新生児は生後1日から直接経口投与

 

次の4つの試験ケース(arm)について試験している

Continuous dosed group(2年間又は1年間連続BPA投与)

雌雄各1匹/腹は2年間飼育し検査する    50匹/性/群

雌雄各1匹/腹は1年間飼育し検査する    26匹/性/群

Stop dosed group(生後21日間だけBPA投与)

雌雄各1匹/腹は2年間飼育し検査する    50匹/性/群

雌雄各1匹/腹は1年間飼育し検査する    26匹/性/群

 

<検査項目>

慢性毒性試験としての検査項目(生死、体重、餌摂取量、血液検査、臨床化学検査、器官の肉眼及び病理検査)の他、生殖毒性に関する検査項目として、出産時の生存子数、死亡子数、子の性比、子の体重、精子検査(精子の数、形態、運動性)、生後4ヶ月から膣の細胞検査(異常な性周期を観察)などを行っています。

 

<結論>

結論として、CLARITY-BPAのコア試験では、組織病理学的検査で観察されたBPA投与群と溶媒対照群との間の統計的に有意な差は、(特に25,000μg/kg/日未満では)、用量相関性はなく、時には1つの低用量群または中間用量群でのみ生じており、離乳期のみ投与群および連続投与群および検査時期で、臓器に一貫した影響の明確なパターンを示さなかった。

対照的に、高EE2投与群では、雌で明らかに説明可能で生物学的にもっともらしい方法で、いくつかのエストロゲン作用を誘発した。

25,000 μg/kg/日で観察された所見(雌の生殖器および雄下垂体での影響)は BPA投与の影響である可能性がある。

Copyright The BPA Safety Committee of Japanese Manufacturers (BSCJM)